家や土地を売却しようと考えたとき、少しでも高く売りたいと思うのは当然です。
不動産売却で重要なのは、やはりタイミングです。
不動産は良いタイミングで売れば高く売却できますし、タイミングが悪ければ安く売却することになります。
では、一口に『売りどき』といっても、どのようなタイミングがあるのでしょうか。
そこで、この記事では不動産売却のタイミングについて解説します。
この記事を読むことで、売却にベストなタイミングを判断するポイントや価格動向を見極める指標、将来予想される影響について知ることができます。
記事に書いてあることを参考にすれば、不動産が少しでも高く売却できる確率はグンと高まること間違いなしです。
市況における不動産売却のタイミング
不動産を高く売るには、市況におけるタイミングを意識することが重要です。
不動産価格は市況が良いときには特は高くなり、市況が悪いときは安くなります。
公益財団法人東日本不動産流通機構の「首都圏・近畿圏マンション市場予測2023年」より、マンションの価格を見てみましょう。
これを見ると、ここ7年で価格が高騰しています。
コロナウィルスにより政府の支援給付などがあり、インフレが進み不動産価格が上がっています。
また、2023年は円安ということもあり、外国人が不動産を買い漁っているのも影響しています。
季節における不動産売却のタイミング
不動産売却は季節におけるタイミングを意識する必要があります。
直近は新型コロナウィルスにより常に需要があるため、コロナが流行る前のデータ(2019年)のデータを公益財団法人東日本不動産流通機構の「Market Watch2019(令和1)年12月度」からみていきます。
毎年、2~3月の引っ越しシーズンは不動産の取引件数は上昇します。
それに対して例年8月はお盆休みもあり、不動産の取引件数は下落します。
不動産は2~3月が売りやすく、8月は売りにくいというのが特徴です。
不動産の売却には3ヶ月程度販売期間を要するため、12月くらいから売却を始めるのが適切となります。
築年数における不動産売却のタイミング
不動産売却は築年数におけるタイミングも意識する必要があります。
中古住宅は、マンションも戸建ても築20年以内に人気が集中しますので、築20年以内が売りやすくなります。
公益財団法人東日本不動産流通機構の「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2019年)」によると、築年数別の値引き率は以下の通りです。
中古住宅の値引き率は、築20年を過ぎると急激に上昇し始めます。
木造の戸建ては築20年超、鉄筋コンクリート造のマンションは築25年超で買主が住宅ローン控除を原則として利用できないためです。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んで家やマンションを購入すると「年末のローン残高の1%が10年間、所得税から控除される」という優遇制度です。
戸建てもマンションも築20年を過ぎると売却しにくくなりますので、売るなら築20年以内に売ることをおススメします。
税金から見える不動産売却のタイミング
税金におけるタイミングも売却価格に影響します。
不動産を売却したときは、譲渡所得が生じると税金が生じます。
譲渡所得の求め方は以下の通りです。
譲渡価額は売却価額です。
取得費とは、土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価額になります。
減価償却とは、建物の価値を減少させていく会計上の手続きのことです
譲渡費用は、仲介手数料や印紙税、測量費など、売却に直接要した費用です。
税金は、譲渡所得に対して税率を乗じて計算します。
譲渡所得にかかる税率は、不動産の所有期間によって決まります。
税率は、1月1日時点において所有期間が5年超の場合は長期譲渡所得、1月1日時点において所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得の2つに分類されます。
それぞれの税率は以下の通りです。
所得の種類 | 所有期間 | 所得税率 | 住民税率 |
---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% |
期譲渡所得長 | 5年超 | 15% | 5% |
復興特別所得税に関しては、所得税に対し、一律に2.1%を乗じて求めます。
そのため、譲渡所得が生じる場合には、所有期間は5年を過ぎたタイミングで売却した方が安くなります。
賃貸マンションやオフィスビルなどの収益物件は、築年数が経過しても価格が下がらないことが多いです。
収益物件では、売却すると譲渡価額が取得費よりも高くなり、譲渡所得が生じることが良くあります。
よって、譲渡所得が発生しやすい収益物件の場合は、短期譲渡所得と長期譲渡所得の税率の変化を強く意識する必要があります。
一方で、マンションや戸建てなどのマイホームは、築年数とともに価格が下がるため、譲渡所得が発生しないことが多いです。
マイホームでは売却すると、むしろ譲渡損失(マイナスの譲渡所得のこと)が発生することが良くあります。
居住用財産と呼ばれるマイホームの売却では、譲渡損失が生じた場合は、やはり「5年超」というタイミングを意識することが重要です。
居住用財産の売却では、譲渡損失が生じると税金還付を受けられる特例を利用できるからです。
税金還付の特例には、以下の2つの特例が存在します。
- マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
- 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
これらの特例では、いずれも売却物件の要件に「所有期間が5年超」という要件が含まれています。
5年以内で売却してしまうと、これらの税金還付の特例が利用できないため、居住用財産の売却でも5年超というタイミングを意識するようにしましょう。
不動産の価格動向を見極める指標
不動産の価格動向を見極める指標は、以下になります。
「不動産の価格動向を見極める3つの指標
- 株価
- 取引件数
- 周辺環境
不動産を少しでも高く売却したいなら、不動産の価格動を見極めてより良いタイミングに売却することが重要です。
不動産の価格動向を見極める指標1.株価
株価は不動産価格の先行指標です。
株価が上がると遅れて不動産価格が上がり、株価が下がると遅れて不動産価格が下がります。
過去の日経平均株価と東京都の地価公示価格の変動推移を示すと以下の通りです。
土地価格は、おおむね株価の動きと連動していますが、土地価格のピークは株価のピークの1~2年後に遅れて発生していることが分かります。
よって、株価の動きを注視すれば、1~2年後の不動産価格の値動きなら予測することは可能です。
不動産の価格動向を見極める指標2.取引件数
株価と同様に、不動産の取引件数も不動産価格の先行指標です。
取引件数が増えれば遅れて不動産価格も上がり、取引件数が減れば遅れて不動産価格も下がります。
以下に、公益財団法人東日本不動産流通機構の「首都圏不動産流通市場の動向(2019年)」より、過去10年間の土地の取引件数と土地の価格の推移を示します。
上のグラフは、青が「土地価格」、赤が「土地取引件数」を示します。
例えば、2014年から2015年にかけては、土地の取引件数は上昇しているのに対し、土地の価格は下落しています。
土地価格は、1年遅れて2015年から2016年にかけて上昇に転じています。
取引件数と価格の関係は非常に密接しており、1年後には価格への影響が現れます。
そのため、不動産価格は、取引件数が下落した年が価格のピークであり、翌年には価格が下がり始めるということです。
取引件数に関しては、注視しているとテレビのニュースに取り上げられていることもあります。
取引件数が上がった、または下がったというニュースは、来年の価格動向を知る上で重要な情報となりますので、注視しておくと良いでしょう。
不動産の価格動向を見極める指標3.周辺環境
株価や取引件数は、日本全体の不動産価格に影響を与えるマクロ的な要因でした。
一方で、不動産価格は周辺環境の変化といったミクロ的な要因も影響します。
不動産価格に最も影響を与える周辺環境の変化は再開発です。
記憶に新しいところで、川崎市の武蔵小杉は再開発によって大きく不動産価格が上がりました。
それより以前は、東京都江東区の豊洲も再開発によって大きく不動産価格が上昇しています。
武蔵小杉や豊洲は、再開発が行われる以前は大規模な工場の跡地でした。
大規模な工場周辺は人があまり住まないこともあって、土地の価格が低くなります。
そこに再開発によって新たな街が生まれると、人が多く住むようになりますので土地価格が大きく上昇することになります。
再開発は、株価や取引件数といったマクロ的な要因とは全く別のタイミングで起こります。
周辺に街を大きく変えるような再開発の動向があれば、不動産価格が上がる可能性もありますので、再開発後に売却するのが売りどきです。
将来予測される不動産売却への影響
不動産の価格動向を見極める指標について、理解していただけたのではないでしょうか。
次に紹介するのは、「将来予測される不動産売却への影響」です。
将来予想される不動産価格に与える3つの影響
- 住宅ローンの変化
- 空き家の増加
- 生産緑地法の解除
この章を参考にして、不動産を売却するタイミングを検討いただけると幸いです。
将来予測される不動産売却への影響1.住宅ローンの金利変動
住宅ローンの金利変動は売却タイミングに影響を与えます。
国内では、2013年頃から続いている日銀の異次元金融緩和政策のため、低金利の状態が続いています。
バブル時代に比べると、住宅ローンは総じて安い状態にあり、その結果、住宅取得意欲が向上して不動産価格が高くなってきました。
仮に今後、日銀が金利を上昇させるような政策に舵を取れば、住宅ローンの金利も上昇して不動産の購入需要が落ち込むと考えられます。
日銀の金融政策は、突然、変わるものではありません。
恐らく、国内でそれなりのインフレが生じてから変化するものと思われ、前触れは十分にあるはずです。
今のところ金利が上がる見込みはありませんが、将来的に金利の上昇の兆しがあれば、売りどきではなくなる可能性はあるでしょう。
将来予測される不動産売却への影響2.空き家の増加
空き家の増加は不動産を売却しにくくさせる深刻な原因です。
総務省統計局による「平成30年住宅・土地統計調査」によれば、全国の空き家数と空き家率の推移は以下のようになっています。
空き家は全国的に増えつつあり、今のところ増加が収まる気配がありません。
特に地方は今後も空き家が増えていきますので、今後の空き家の増加を考慮すると「まさに今」が売却のベストタイミングといえます。
将来予測される不動産売却への影響3.生産緑地法の解除
以前は、2022年に生産緑地法の解除によって、不動産価格が下落するのではないかという噂がありました。
これは通称、「2022年問題」と呼ばれています。
2022年問題とは、言い換えると生産緑地法という法律の不備の問題です。
2022年に市街地の農地が一気に売りに出されるような法律構成でしたが、この法律の不備は既に解消されています。
2022年問題はかなり以前から指摘されていたため、2017年6月には特定生産緑地制度が導入され、2018 年9月には「都市農地貸借法(都市農地の貸借の円滑化に関する法律)」という法律もできました。
これらの法整備によって、従来から懸念されていた2022年問題は起こらないようになっています。
そのため、2022年に生産緑地法が原因で不動産市況が崩れることはないと考えて大丈夫です。
不動産を高く売るなら不動産一括査定は欠かせない
不動産を高くスムーズに売りたい!
そう考えるなら2つのポイントがあります。
- あなたの不動産に強い会社を見つけること
- あなたと相性の良い不動産会社を見つけること
2つ書きましたが、まとめると「信頼できる不動産会社を見つけること」。
ただ、信頼できる不動産会社と言われても、探せられないですよね…
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不動産一括査定を選ぶ3つの基準とオススメの使い方
筆者が考える不動産一括査定のオススメランキングをお伝えします。
不動産一括査定も様々ありますが、やはり家やマンション、土地は高額になりますので、より得意としている会社を見つけたいですよね。
サイトを選ぶ基準としては下記3つ。
不動産一括査定を選ぶときの3つの基準
- 大手不動産会社に最低でも1社は査定が行えること
- 中堅や地域密着の不動産会社にも査定が行えること
- 不動産一括査定の運営会社がしっかりしていること
ポイントは、大手から地域密着の不動産会社まで幅広く依頼をすること。
大手は取引実績が豊富な分、やっぱり売却力があります。
ただし、お客さんをたくさん抱えているため、仕事のやり方がマニュアル通りといった感じ。
逆に中堅や中小・地域密着の不動産会社は社長自らが対応してくれたりします。
不動産一括査定を1つだけ使っても、大手不動産会社が見つからなかったり、逆に大手のみしか依頼できない場合が多々あります。
筆者としては、不動産は高額商品になるので、時間が掛かっても複数の不動産一括査定を使って、大手、中堅、地域密着の不動産会社それぞれに依頼することをオススメしています。
【結論】不動産一括査定のかしこい使い方
東京・神奈川・千葉・埼玉・大阪・兵庫・京都・奈良の方は3サイトを併用する県庁所在地などの人口が多い都市は2サイトを併用する
地方や田舎などの人口が少ない市町村は3サイトを併用する
収益・投資用物件に強い会社が多数見つかる3サイトを併用する
まとめ
不動産を売却するタイミングの判断ポイントには、「市況におけるタイミング」、「季節におけるタイミング」、「築年数におけるタイミング」、「税金におけるタイミング」の4つがあります。
不動産の価格動向からタイミングを見極める指標としては、「株価」「取引件数」「周辺環境」の3つです。
不動産売却において将来予測される影響としては、「住宅ローンの変化」、「空き家の増加」が考えられます。
タイミングを理解できたら、売りどきを逃さず売却しましょう。