近年、キャンプブームもあって個人が山林を購入するケースが増えています。
山林は売却しにくい不動産ですが、ブームにあやかれば売却できる可能性もあります。
もしあなたが山林の売却を検討しているのなら、以下のような考えを一度は持ったことありませんか?
- そもそも山林は売却できるのだろうか
- 近くにある不動産業者は、山林を売却してくれるのだろうか
- 売れるとしたら、いくらぐらいで売れるのか
山林の売却は住宅などの一般的な不動産売却と比べ、どこが異なるのでしょう。
そこで今回の記事では「山林の売却」について解説します。
この記事を読むことで、あなたは山林価格の相場や山林売却の流れ、税金および手数料について知ることができます。
山林を購入する人が増えている
従来、山林は林業を営む人たちが購入する限られたマーケットでした。
幸運にも道路計画の用地買収にひっかかれば、ようやく買ってもらえるケースもありました。
しかしながら、キャンプ好きの芸能人の影響もあって、アウトドアを楽しむために個人が山林を購入するケースが増えてきています。
キャンプ好きの人には、「キャンプ場での混雑を味わいたくない」、「自分のペースでキャンプを楽しみたい」といった思いがあり、山林の購入ニーズが見られるようになってきました。
国土交通省によると、2020年における山林の取引件数は全国で7.8万件となっています。
上記の数値は国土交通省からのアンケートに回答があった取引のみなので、実際にはもっと多くの取引が存在します。
神奈川県や千葉県でも年間200を超える山林の売買があります。
山林は、住宅など一般的な不動産と比べると売却するのは簡単ではありません。
しかしながら、キャンプなどアウトドアブームの影響もあって、以前よりも山林の購入が活発になる可能性も考えられます。
山林の種類
山林は主に以下の4種類に分けられます。
種類 | 定義 |
---|---|
都市近郊林地 | 市街地の近郊にある林地、価格は最も高い |
農村林地 | 通称、里山とも呼ばれる農村集落周辺の林地 |
林業本場林地 | 林業が行われている隣地または地方の有名林業地 |
山村奥地林地 | 最も不便な山村奥地にある林地 |
財団法人資産評価システム研究センターによる「土地に関する調査研究-山林の評価について-(平成22年3月)」によると、全国の山林のおよその相場は以下の通りです。
種類 | 相場 |
---|---|
都市近郊林地 | 1,000円/㎡以上 |
農村林地 | 1,000円/㎡未満 |
林業本場林地 | 50円/㎡未満 |
山村奥地林地 | 50円/㎡未満 |
感覚的にいうと、「農村林地」は周辺の農地と近い相場水準となります。
農村隣地や農地の価格は、周辺の地価の約100分の1程度の金額となっていることが一般的です。
山林の相場の確認方法
山という不動産は、本当に買い手が少ないです。
都道府県地価調査とは、各都道府県が特定のポイントの宅地や林地について、毎年7月1日時点の価格を公表している制度になります。
都道府県地価調査は、国土交通省に「標準値・基準地検索システム」で閲覧することが可能です。
山林の地価調査価格を調べるには、トップ画面で「都道府県単位で検索」にチェックを入れ、調べたい都道府県を選択します。
次に「林地(都道府県地価調査のみ)」にチェックを入れて検索すると、各都道府県の山林の地価調査価格を知ることが可能です。
しかしながら、不動産市場における「相場」は、過去の取引によって形成されていきます。
つまり、一定の取引件数が過去になければ相場は形成されません。
山林は買い手が少ない不動産なので、相場はあくまで目安として認識したほうが良いです。
また、山林は宅地と比べて同じような条件で探すことが難しいため、取引実績はあくまでも参考レベルとしておきましょう。
山林売却の流れ
この章では山林売却の流れについて解説します。
山林売却の流れ5つのステップ
- 必要書類の取得
- 名義の確認
- 境界確定
- 山林専門の不動産会社を探す
- 査定~引渡
山林を売却する流れのタイミングごとに詳しく解説しますので、ご確認ください。
必要書類の取得
山森林売却では、不動産会社に相談する前に以下の必要書類を準備しておくと売却手続きなどスムーズになります。
書類 | 概要 |
---|---|
固定資産税の納税通知書等 | 原則として所有者しか取れないので準備しておく |
森林簿 | 都道府県の森林担当部署にて所有者が取得できる資料で、森林の所在地や所有者、面積や森林の種類、材積や成長量が記載された台帳 |
森林計画図 | 都道府県の森林担当部署にて所有者が取得できる資料で、森林のおよその場所を特定できる資料であり、林班図とも呼ばれている |
実測図 | できれば境界が確定している境界確定図が望ましい |
また、以下の書類を法務局で取得し、売却したい山林の状況を把握しておいてください。
書類 | 確認事項 |
---|---|
登記簿謄本 | 現在の所有者に名義変更されているか確認する |
公図 | 隣地の地番や状況がわかるただし、公図は測量図としては不正確である |
地積測量図 | もしあれば、測量がなされていることになる |
名義の確認
相続で引き継いだ山林は、登記簿上の所有者が現在の所有者に名義変更されていないことが多いです。
山林を売却するには、まず売主となる現在の所有者の名義になっている必要があります。
異なる場合には、名義変更することが必要となります。
名義変更に必要な書類は以下の通りです。
・遺言証書
・遺言者の死亡事項の記載のある除籍謄本
・遺言により相続する相続人の住民票
・固定資産税評価証明書
・受遺者の戸籍謄本
・相続関係説明図(任意)
・遺産分割協議書(相続人全員自著・実印押印・印鑑証明書添付)
・被相続人の10歳前後から死亡に至るまでの継続した全ての戸籍謄本
・被相続人の除住民票
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の住民票
・固定資産税評価証明書
・相続関係説明図(任意)
境界確定
山林の売却でも、買主から境界確定を求められることが多いです。
山林の売却では、この境界確定が最も難しい問題となります。
山林は、そもそも売却対象の範囲がどこからどこまでなのか不明なことが多いです。
売却対象の範囲を確定するためにも、境界確定を行わなければなりません。
境界の確定は、通常の宅地と同様に隣地所有者の立会いの下で行います。
しかしながら山林の場合、隣地所有者が所有者不明土地となっており、境界が確定できないことが多いです。
隣地所有者が特定できず、境界が確定できない場合には、市町村の農林課、都道府県の農林事務所や森林組合等の公的機関に相談するとアドバイスをもらえることがあります。
測量費は、山林の売却額よりも高くなってしまう可能性がありますので、まずは公的機関に相談して解決の糸口を見つけるようにしてください。
山林専門の不動産会社を探す
山林の売却では、山林専門の不動産会社を探すことが必要です。
通常の不動産会社は、山林の売却をほとんど扱ったことがないため、売却を依頼しても断られてしまいます。
山林専門の不動産会社を探すには、「山林」が査定できる不動産一括査定サイトを使うのが現実的です。
しかしながら、一般的な一括査定サイトは、山林を売却できる不動産業者と提携していません。
山林の査定を依頼できる不動産一括査定サイトは「HOME4U」になります。
査定依頼する際に物件種別を選択する項目があるので、「山林」と記載しましょう。
不動産一括査定サイト「HOME4U」は、山林の売却に対応している不動産業者と多数提携しています。
なお、不動産一括査定サイトを使っても、査定してくれる不動産会社が見つからない場合は、地域の山林組合に相談してみるのも一つです。
査定~引渡
山林の売却は、山林専門の不動産会社が見つかれば、後は普通の土地売却と同じです。
売却活動を開始し、買主が見つかれば売買契約を締結します。
売買契約の後は、1~2か月後に引渡を行います。
山林の売却で税金が生じる場合には、売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告が必要です。
なお、売主は関係ありませんが、「買主」は山林の所有者となった日から90日以内に、市町村の長に対して、「森林の土地の所有者届出制度」による届出が必要となります。
山林売却の税金
続いて、山林売却の税金について解説しましょう。
税金の対象となる個人の所得は、以下の10種類になります。
2. 譲渡所得
3. 給与所得
4. 不動産所得
5. 事業所得
6. 利子所得
7. 配当所得
8. 退職所得
9. 一時所得
10. 雑所得
所有期間が5年を超える立木を伐採して売却したことで得られる所得が「山林所得」となります。
また、山林そのものを売却したときの所得は「譲渡所得」です。
この章では、山林売却に関連する「山林所得」と「譲渡所得」について詳しく解説します。
立木部分は山林所得
山林所得の求め方は、以下の通りです。
総収入金額とは、立木等の売却額です。
必要経費とは、植林費などの取得費のほか、下刈費などの育成費、維持管理費、伐採費、搬出費、仲介手数料などになります。
税額は、「5分5乗方式」と呼ばれる求め方で計算します。
5分5乗方式で計算される税額は以下の通りです。
税率は「山林所得の5分の1」に乗じた額によって決まります。
山林所得の5分の1に乗じる税率は以下の通りです。
課税される所得金額(山林所得の5分の1) | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
例えば、山林所得が200万円だった場合、具体的な計算方法は以下の通りです。
土地部分は譲渡所得
譲渡所得の求め方は以下の通りです。
譲渡価額は売却価額です。
取得費は、山林の購入額になります。
譲渡費用は、仲介手数料や印紙税、測量費など、売却に直接要した費用です。
税金は、譲渡所得に対して税率を乗じて計算します。
譲渡所得にかかる税率は、山林の所有期間によって決まります。
税率は、1月1日時点において所有期間が5年超の場合は長期譲渡所得、1月1日時点において所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得の2つに分類されます。
それぞれの税率は以下の通りです。
所得の種類 | 所有期間 | 所得税率 | 住民税率 |
---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 30% |
195万円を超え 330万円以下 | 5年超 | 15% | 5% |
復興特別所得税に関しては、所得税に対し、一律に2.1%を乗じて求めます。
山林では購入額がわからず、取得費が不明となることが多いです。
取得費が不明の場合には、概算取得費というものを用います。
概算取得費とは「譲渡価額の5%」です。
例えば以下の状況で税金を計算してみます。
なお、相続で取得した山林については、所有期間は被相続人(亡くなった人)の所有期間を引き継ぎます。
被相続人の所有期間が5年超であれば、その時点で長期譲渡所得となります。
山林売却の手数料
不動産会社に山林の売却を依頼すると、仲介手数料が生じます。
山林は宅地ではないため、宅地建物取引業法の規制を受けませんが、商習慣として宅地の売買と同じ仲介手数料が請求されることが一般的です。
宅地建物取引業法では、宅地の仲介手数料の上限は以下のように定められています。
取引額(売買金額) | 速算式(上限額) |
---|---|
200万円以下 | 5% |
200万円超から400万円以下 | 4%+2万円 |
400万円超 | 3%+6万円 |
一般的に、仲介手数料は3%とイメージしている人が多いですが、売却額が200万円以下になると5%となります。
山林は取引金額が小さいこともあり、仲介手数料は「5%」や「4%+2万円」で請求されることもあり得ます。
なお、宅地の仲介手数料の上限で請求してくる不動産会社は良心的な不動産会社の証でもあります。
不動産会社を選ぶ際は、最初に手数料についても確認し、不動産会社選びの参考の1つにとするようにしてください。
まとめ
山林の売却について解説してきました。
山林には、「都市近郊林地」、「農村林地」、「林業本場林地」、「山村奥地林地」の4種類があります。
売却の流れとしては、「名義変更」、「境界確定」、「必要書類の取得」、「山林専門の不動産会社を探す」まで行えば、後は通常の売却と同じです。
税金については、立木部分なら山林所得、土地部分なら譲渡所得によって計算します。
山林売却の際の手数料は、一般の宅地の仲介手数料を参考に決定されることが多いです。
山林の売却方法がわかったら、一括査定サイトを使って山林専門の不動産会社を見つけることから始めてみましょう。
山林を売却する際は、今回紹介した知識をぜひ活用してみてください。
改めてお伝えしますが、山林の査定が依頼できる不動産一括査定サイトは、「HOME4U」になります。