「市街化調整区域の土地を持っているのだけど、どうやったら高く売れる?」「なるべくスムーズに売却を進めたい」と思っていませんか?
市街化調整区域とは、市街化を避けるエリアのため、行政に許可をもらわないと建物を建てることすらできない地域のことです。
相続等で土地や宅地を手に入れる時、市街化調整区域であることが少なくありません。
自分で使わないのであれば、市街化調整区域の土地や宅地は売ろうと思うことでしょう。
しかし実は市街化調整区域はめちゃくちゃ売りにくく不動産会社選びを誤ると、なかなか売れなくなってしまうという事実をご存知でしょうか。
考えずに適当に不動産会社を選んでしまうと、いつまでたっても売れない可能性は大いにあります。
しかし、ご安心ください。
今回の記事では「市街化調整区域とは?」という基礎知識はもちろんのこと、どうすれば市街化調整区域の土地や宅地を満足いく金額で売却できるのかを解説します。
市街化調整区域とは
- 市街化調整区域とは、都市計画法で定められている市街化を抑制すべき区域のこと
- 市街化とは街づくりのことであり、街づくりとは「住む場所」や「働く場所」を作ること
「住む場所」や「働く場所」には建物を建てることが必要です。
市街化調整区域とは、「住む場所や働く場所を作ってはいけませんよ」というエリアであり、言い換えると原則として建物を建てることが出来ないエリアになります。
あくまで、「原則」になりますので、建物を建てたり既存の建物を建て替えたりすることが可能なケースもあります。
市街化区域は、「どんどん街づくりをしてください」という区域なので、建物を建てることが可能。
東京23区や全国の政令指定都市の中心街、一定規模以上の市の中心街等は市街化区域に指定されています。
市街化区域には、「住む場所」や「働く場所」がどんどん作られるようになっているため、市街化区域には人が多く集まっています。
それに対し、市街化調整区域には人が集まることができないため、街も衰退しており土地価格も非常に安いです。
市街化調整区域は農村地帯を守るためにできた
市街化調整区域は、元々は都市部に近い場所にあった農村地帯を守るためにできました。
高度成長期時代には、日本は様々なところで山が切り開かれ、虫食い状に宅地開発が行われました。
放っておくと、乱開発が行われ、多くのエリアで自然環境や農地が失われる懸念があったことから、開発を抑制するために市街化調整区域が登場しました。
市街化調整区域はすぐに売却できるポテンシャルを持っている地域
市街化調整区域は、乱開発が懸念されるような場所が指定されたため、元々の土地ポテンシャルは高いとも言えます。
もし、市街化調整区域に指定されていなかったら、とっくの昔に宅地開発され、大きな住宅街ができていたようなエリアということです。
市街化調整区域の周辺には、多くの人口が住んでおり、建物が建つような土地なのであればすぐに売却できるという市場性を秘めています。
しかしながら、市街化調整区域は土地の利用規制が厳しいため、基本的に外部の人が購入しても建物を建てることができません。
潜在的な購入ニーズはあるものの、いびつな政策のために土地の価値が不自然に低くさせられているエリアなのです。
市街化調整区域で売却しやすい土地
市街化調整区域内の物件でも売却しやすい土地は存在します。
この章では、市街化調整区域で売却しやすい土地を紹介します。
合法的に建物が建っている土地
市街化調整区域では、既に合法的に建物が建っている土地は、購入者が同規模同用途の建物であれば建て替え可能であるため、市場性があります。
市街化調整区域で合法的に建物が建っているケースは、主に以下の3つのパターンがあります。
市街化調整区域で合法的な建造物の3パターン
- 開発許可を受けて建てた建築物
- 開発許可を受ける必要のない建築物
- 都市計画法第60条証明による建築物
「開発許可を受けて建てた建築物」は、市街化調整区域内で合法的に建てられた建築物の一つです。
開発許可に関しては、次節で解説します。
市街化調整区域では、建物を建てる際、「開発許可を受ける必要のない建築物」もあります。
具体的には以下の建物が該当します。
- 農林漁業の用に供する一定の建築物(畜舎、温室、サイロ、農機具等収納施設)
- 農林漁業を営む者の居住用建築物
つまり、農家の人が自宅を建てる場合には、開発許可を受ける必要がなく建物を建てることができます。
そのため、農家の人にとっては、市街化調整区域内の土地はどこでも自宅が建築できる価値のある土地ということになります。
また、市街化調整区域では、「都市計画法第60条証明による建築物」というのもあります。
第60条証明に該当する建物であれば開発許可を受けることなく建築が可能です。
第60条証明に該当する建物には、以下のような建物があります。
建築物の種類 | 条件 |
---|---|
農林漁業用建築物(新築) | 農家住宅 |
農家住宅以外の農林漁業用建築物 | |
公益上必要な建築物 | 新築・用途変更 (公益性が明確なものは除く) |
日常生活用品の販売・加工等の業務用の建築物 | 50 ㎡以内の調整区域内居住者の 自己業務用建築物の新築 |
開発許可を受けた開発区域内における建築物 | 大きな住宅団地開発の区域内の建築などで 開発許可書等の添付ができないもの |
既存適法建築物の延べ面積が1.5 倍以内の増改築 | 用途変更を伴わない場合に限る (既存部分の適法性が建築確認等で確認できる場合等を除く) |
上記の建物であれば、市街化調整区域でも買主が購入後に建物を再建築することが可能になるので、市場性が高いと言えます。
開発許可を得られる土地
市街化調整区域でも開発許可を得られる土地は更地であっても価値が高いです。
開発行為に該当し、許可が必要となるものは以下の3つです。
開発行為の種類 | 内容 |
---|---|
土地の区画の変更 | 敷地の分割など。 敷地内に私道を造るときなどが該当します。 |
土地の形状の変更 | 切土、盛土等の造成工事など。 山を切り開いて住宅街を造るときなどが該当します。 |
土地の性質の変更 | 地目の変更など。 農地や雑種地を宅地に変更する場合が該当します。 |
市街化調整区域では、上記の3つの開発行為を行う場合、土地の面積に関わらず許可が必要になります。
ここで、建物を建てる行為は、上記の「土地の性質の変更」に該当します。
土地の性質の変更は、農地や雑種地から宅地に変更することです。
つまり、現状、市街化調整区域内の建物が建っていない土地は雑種地に該当し、そこに建物を建てることは雑種地を宅地に変えることを意味します。
よって、「建物を建てること」イコール「土地の性質の変更」となり、「土地の性質の変更」は開発行為の一つであることから、市街化調整区域では建物を建てる際、開発許可が必要となるのです。
他の市街化区域等でも開発行為には許可が必要となりますが、他のエリアには1,000㎡以上等の面積要件があります。
市街化調整区域は唯一面積要件のないエリアですので、どんな小さな土地でも開発行為を行う際は許可が必要です。
逆に言うと、許可要件を満たせば市街化調整区域でも建物を建てることが可能ということです。
市街化調整区域で開発許可を受けるには、都市計画法の「33条基準」に全て適合し、かつ、「34条基準」の1つに該当することが必要となります。
33条基準の全てに適合 + 34条基準の1つに該当
33条基準とは、技術的基準と呼ばれ、例えば以下のような要件が必要です。
33条基準第1項第3号
排水施設が下水を有効に排出するとともに、開発区域及び周辺区域に溢水が生じないような構造及び能力で適当に配置されていること。
上記の要件は、下水が敷地外に有効に排出される要件を定めており、実務上、最もハードルの高い要件となっています。
要件は他にも1号から14号まであり、すべて満たす必要です。
市街化調整区域では、33条基準をすべて満たしたとしても、さらに34条基準の1つに該当する必要があります。
例えば、34条基準には、以下のような要件があります。
33条基準第11号
市街化区域に隣接し、又は近接し、かつ、自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域であっておおむね 50 以上の建築物が連たんしている地域のうち、政令で定める基準に従い、都道府県の条例で指定する土地の区域内において行う開発行為で、予定建築物の用途が、開発区域及びその周辺の地域における環境の保全上支障があると認められる用途として都道府県の条例で定めるものに該当しないもの
上記の要件は、いわゆる「50戸連たん」と呼ばれるものですが、市街化区域との境界に近接しているようなエリアであれば、開発許可が受けられる可能性があります。
市街化調整区域の土地を求める買主
前章では、市街化調整区域のなかでも、売却しやすい土地に関して解説しました。
この章では、一体どのような買主が市街化調整区域を買ってくれそうなのか。という点について解説していきます。
市街化調整区域の売却では、「土地取得費用を抑えたい」というニーズの買主がメインになりますが、前述のとおり建物が建てられるのかどうかで、買主となりえる層が大きく変わってくることがご理解頂けるかと思います。
市街化調整区域の土地の売却では、行政調査の結果を完了した後、買主を絞り込みながら売却活動を進めていくことが大切になります。
建物が建てられる市街化調整区域の土地を求める買主の例
具体的には以下のような買主が一例として想定されます。
- 開発目的の事業者
- 今の建物をそのまま利用する人
まず、開発許可が受けられる土地であれば、市街化調整区域で開発実績のあるディベロッパーが購入してくれる可能性があります。
また、既に建物が建っている場合、今の建物をそのまま使いたいという人も購入を希望する可能性が高いです。
建物が建てられない市街化調整区域の土地を求める買主の例
具体的には以下のような買主が一例として想定されます。
- 農家
- 農産物加工業者
- 隣地所有者
- 近隣で事業を展開している事業者
建物が建てられない場合は売却の難易度が高まり、ターゲットを売りやすい人に絞って売却活動を進めることがより重要になります。
まず、前述したとおり、農家であれば開発許可なしで自宅を建てることができますし、農産物加工業者であれば、畜舎やサイロ、農機具収納施設等の建築が可能です。
隣地所有者も購入可能性の高いターゲットになります。
隣地を購入することで、土地の形状や間口の広さが向上したり、下水道に接続できる等のメリットが出てきます。
個人だけでなく、近隣で事業を展開している事業者も購入の可能性は高いです。
駐車場用地や資材置場としての購入ニーズもありますので、打診して見る必要はあります。
以上、市街化調整区域の土地を求める買主の例を解説してきました。
効果的にターゲットを絞って売却活動を進めていくに当たっては、まず最初に、より良い不動産会社を見つけるところから始まります。
市街化調整区域で売るときの注意点
この章では、市街化調整区域で売るときの注意点について解説します。
買主のローン審査が通りにくい
買主のローン審査が通りにくいという点が注意点です。
多くの銀行では、住宅ローンの審査基準に「市街化調整区域の物件でないこと」という要件を設けています。
そのため、市街化調整区域内の物件を購入しようとすると、借主が住宅ローン審査を通らないことが多いです。
住宅の売却では、売買契約書においてローン特約を設けるのが一般的です。
ローン特約は、買主が本審査に通らなかった場合、ノーペナルティで売買契約を解除できるという特約になります。
つまり、ローン特約によって契約解除が行われた場合、売主は売買契約で受領した手付金を買主へ返還することになります。
市街化調整区域の物件は、通常であればローンが組めないため、売買契約前に借主にローンの仮審査を通してもらい、事前にローンが通ることを確認してもらうことが必要です。
もしくは、住宅ローンを組まない人に購入してもらうことになります。
市街化調整区域の物件の売却は、買主が住宅ローンの審査を通すのが難しいという前提で、売却活動をすることが必要です。
売却後に契約が解除されることがある
市街化調整区域の物件は、売却後に契約が解除されることがあるため注意が必要です。
不動産の売却では、買主が契約の目的を達成できない場合には、購入後、契約を解除することができます。
例えば、「建物を建てることを目的で購入」したにも関わらず、規制により建物を建てることができなかった場合は、契約の目的を達成できないことになり、解除事由に該当します。
開発許可が受けられるかどうかは、仲介する不動産会社調べることですが、その不動産会社の調査が甘く、実は開発許可は受けられなかったとすると建物を建てることができません。
この場合、不動産会社の重要事項説明義務違反となりますが、契約解除されてしまうと売主としては売買代金を返還しなければいけないことになります。
よって、市街化調整区域の物件を売却するには、市街化調整区域の売却に慣れた不動産会社に依頼することが重要です。
大手の不動産会社は市街化区域内の物件ばかり扱っているため、必ずしも市街化調整区域に詳しいとは限りません。
市街化調整区域の役所調査は難しく、大手の不動産会社の営業マンでも理解していない営業マンも多いです。
一番良いのは、近くの地元で実績のある不動産会社に依頼するのが適切です。
市街化調整区域は、自治体によって独自ルールがあるため、そのルールを熟知している不動産会社に依頼するのが安全といえます。
市街化調整区域の物件を売却する場合は、不動産一括査定サイトを使い地元の不動産会社に複数社に依頼するようにしましょう。
市街化調整区域での売却の流れ
前章までは、市街化調整区域についての基本知識や売却時の注意事項について解説しました。
この章では市街化調整区域での売却の流れについて解説していきます。
実は、市街化調整区域内の物件であっても、通常の物件の売却の流れと流れが大きく変わることはありません。
ただし、市街化調整区域の物件は、建物が建つ土地かどうかをしっかりと役所にヒアリングして調査しなければならないため、査定に時間がかかります。
通常の物件であれば査定は2〜3日でできますが、市街化調整区域の物件の査定は1〜2週間程度の調査期間が必要です。
また、市街化調整区域の物件は、売却しにくいため、売却までに時間がかかります。
通常の物件の売却期間が3ヶ月とすれば、6ヶ月程度の時間は必要です。
場合によっては1年以上経っても売れないこともあります。
市街化調整区域の物件を売る場合、売主としては、「時間的余裕を持つこと」が一番大切です。
他は普通の物件の売却と同じなので意識すべきポイントはありませんが、時間はかかるということだけは意識しておきましょう。
また、前章でも解説しましたが、ファーストステップとして、市街化調整区域の売却に慣れた不動産会社に依頼することがとても重要になります。
不動産一括査定サイトを活用した効率的な不動産会社選びについて次章で解説していきます。
不動産一括査定サイトを活用した不動産会社選びが鉄則
不動産を高くスムーズに売りたい!
そう考えるなら2つのポイントがあります。
- あなたの不動産に強い会社を見つけること
- あなたと相性の良い不動産会社を見つけること
2つ書きましたが、まとめると「信頼できる不動産会社を見つけること」。
ただ、信頼できる不動産会社と言われても、探せられないですよね…
そんな時に便利になるのが不動産一括査定サイトです。
不動産一括査定サイト(サービス)を利用すると、あなたの売りたいと思っている不動産情報と個人情報を入れるだけで、適切な不動産会社を自動的にマッチングし、複数の不動産会社へ一度に査定依頼が行えます。
不動産一括査定を使うと、あなたの複数の不動産会社を一気に見つけることができます。
不動産一括査定を選ぶ3つの基準とオススメの使い方
筆者が考える不動産一括査定のオススメランキングをお伝えします。
不動産一括査定も様々ありますが、やはり家やマンション、土地は高額になりますので、より得意としている会社を見つけたいですよね。
サイトを選ぶ基準としては下記3つ。
不動産一括査定を選ぶときの3つの基準
- 大手不動産会社に最低でも1社は査定が行えること
- 中堅や地域密着の不動産会社にも査定が行えること
- 不動産一括査定の運営会社がしっかりしていること
ポイントは、大手から地域密着の不動産会社まで幅広く依頼をすること。
大手は取引実績が豊富な分、やっぱり売却力があります。
ただし、お客さんをたくさん抱えているため、仕事のやり方がマニュアル通りといった感じ。
逆に中堅や中小・地域密着の不動産会社は社長自らが対応してくれたりします。
不動産一括査定を1つだけ使っても、大手不動産会社が見つからなかったり、逆に大手のみしか依頼できない場合が多々あります。
筆者としては、不動産は高額商品になるので、時間が掛かっても複数の不動産一括査定を使って、大手、中堅、地域密着の不動産会社それぞれに依頼することをオススメしています。
【結論】不動産一括査定のかしこい使い方
東京・神奈川・千葉・埼玉・大阪・兵庫・京都・奈良の方は3サイトを併用する県庁所在地などの人口が多い都市は2サイトを併用する
地方や田舎などの人口が少ない市町村は3サイトを併用する
収益・投資用物件に強い会社が多数見つかる3サイトを併用する
まとめ
「市街化調整区域の物件を売る」ことについて解説してきました。
市街化調整区域は原則、建物を建てることができないため、売却しにくいです。
市街化調整区域の物件を売る際は、なるべく地元で実績のある不動産会社に依頼し、安全な取引を心がけてください。